生命工学

酒が作られるようになってから約500年を経ていますが、ブドウの汁がワインとなり、麦芽からビールのできる理由、つまり微生物である酵母菌の発見は17世紀の中頃、顕微鏡が発見されてからで、発酵、醸造の原理が学問として確立されたのはわずか100年前のことです。パスツール研究所の創始者として有名なルイ・パスツールがフランス北部のリール大学に教授として赴任したとき、その土地の住民からブドウ酒が腐って困ると相談を持ちかけられ、そこでブドウ酒を顕微鏡で調べてみると、そこには良い微生物と悪い微生物の種々のフローラがあることを発見しました。そして良いフローラだけを利用すれば、ブドウ酒ができ、悪いものが混ざると腐ることがあるということが分かりました。そこでこれらの微生物純粋に分離するために無菌操作という技術が発達しました。これは今でこそ簡単なことですが、当時としては非常に困難なことでした。その結果、純粋培養技術ができました。古い天然発酵技術は学問ではありませんでしたが、生命工学の始りといえます。
アメリカ西海岸地方に地中海ミバエが発生し、カリフォルニア産オレンジなどの輸入で問題となったことがありますが、これに似たことが19世紀の中頃に起きました。これはアメリカ系のブドウの樹をフランスに移植した際に、その根を食い荒らすフィロキセラ・ヴァスタリトスというシラミ目に属する昆虫がフランスに上陸し、1870年から1880年頃にはその被害が全ヨーロッパに波及し、各地のブドウ園は壊滅状態となりました。しかしアメリカ系のブドウはこの虫に強いことがわかり、その根にヨーロッパのブドウを接ぎ木することで解決されました。

酒アルコール辞典

       copyrght(c).酒アルコール辞典.all rights reserved

不動産売買